山梨の桃もも〜一度食べたら忘れられない!記憶に残るマルトウ農園のもも

山梨県笛吹市は、生産量日本一を誇る桃の産地。3月下旬から4月上旬にかけて開花を迎える桃の花は鮮やかなピンク色で、その見事な景観から「桃源郷」と名がつくほどだ。そんな桃の郷にあるマルトウ農園は、旬の時期を迎えると、県内外から桃の注文が殺到する。今回は、その人気の桃を作る雨宮政揮さん・佳江さんご夫妻を訪ね、桃に注ぐ情熱を伺った。


どの実を採ってもおいしい桃を育てる努力

マルトウ農園のある一宮町周辺は中山間地域にあたり、扇状地特有の傾斜によって山から土が流入し、肥沃な土地に恵まれている。昔は桑や米作が中心だったが、その土壌の良さと日照時間の長さから次第に果樹が広まっていった歴史があるという。祖父の代から続くこの地での桃づくりに雨宮さんが就いたのは、2007年頃。都内の広告代理店でデザイナーをしていたが、両親の年齢も考慮し、家業を支えるため山梨に戻ってきた。慣れない農作業にくたくたになりながらも、地元の若手農家の会“東仲倶楽部”に入るなど、おいしい桃づくりのための勉強を惜しまなかった。「扱う資材や剪定方法など、良い技術があると聞けば、県外であろうと視察に行きました。福島まで日帰りで行ったこともありましたね」と当時を笑いながら振り返る。

そんな努力を重ねながら、地道に桃の木と向き合ってきた雨宮さんが、農園の特徴として夫婦で声をそろえて挙げるのは、木の形状と間隔の広さ。奥さまの佳江さんに勧められGoogleマップで農園上を見ると、パラボナアンテナのような枝が伸びる桃の木が等間隔で並んでいる様子がよくわかる。通常は2本の主枝を広げる開心自然型の枝の形状を、ここでは4本に増やし、より太陽光を受けられるようにしている。また、木と木の間隔も他の農園であればもう一本ずつ植えられるほどに広く設定しているという。「スーパーで買った桃で当たりはずれがあるように感じたことないですか。桃にとって光の条件はとにかく大事。100点満点とはいかなくても万遍なく栄養が行き渡ったおいしい桃を作りたいと試行を繰り返し、今の形状にたどり着きました」。

リスクと常に隣り合わせ 「甘熟桃」へのこだわり


ジューシーな桃の代表格である白鳳を筆頭に、日川白鳳、御坂白鳳、あさま白桃、なつっこ、紅くにか、川中島白桃の全7種を育てるマルトウ農園のおいしい桃づくりへの配慮は、先述だけにとどまらない。もともとの肥沃な土地を活かし、化学肥料、除草剤を一切使わず、有機100%の環境に優しい栽培を心がけ、今でこそスタンダードな草生栽培も、この農園では導入して50年近くになるという。深く根を張るライ麦を緑肥に使用し、肥料持ちが良い反面、酸素の供給が難しいとされる粘土質なこの地域の土壌の弱点も克服している。

 そして、最大の魅力は完熟での収穫にある。スーパーなどに並ぶ桃は、店頭に並ぶまでの時間を加味しながら収穫を行うことが多いが、雨宮さんは「未熟な実は絶対に採らない」と決めている。「青いうちにもいで数日後に色がのってきたとしても、もいでしまえばそれ以上糖度が上がることはありません。木の上でギリギリまで待っていれば糖度も上がるし、実も大きくなる。おいしいものを届けるために、これはどうしても譲れないですね」。それほどの強い信念を持って収穫期を迎える雨宮さん。シーズンになれば雨が降ろうが、台風が来ようが、毎日たった一人で畑に入り、熟した実だけを採ってくる。さながらアスリートのようと周囲の人が言うほどの重労働をこなすのだ。もちろん、完熟となれば傷みが早いためリスクも伴う。1日ずれただけで商品価値がなくなったり、落ちてしまったり…。そんな瀬戸際を見極め収穫した桃を、ベストな状態で届けるため、カテリアルをはじめ収穫後すぐに配送できるよう取引先も厳選しているという。

たった一つの桃から広がるコミュニケーション

デザイナーから農家と、長年ものづくりに携わってきた雨宮さんは、前職では感じることのできなかったものづくりの価値を農業に見出しはじめていた。「農業という仕事の本質を考えた時、TVで見かける田舎のおばあちゃんが自分で作った野菜を“これ持っていけ~”と渡す姿が思い浮かぶんです。一生懸命作ったおいしいものを食べてほしい、わかってほしいという気持ちからくるその行動こそ、農業ならではのコミュニケーションだと感じる」という。農園と食べてくれた人、食べた人が贈った人。たった一つの桃を起点として、繋がりが広がり、それによって生まれる対話に面白さを感じているというのだ。「今はスマホやネットなど簡単に情報発信もできるけど、その分記憶をかすめるのも一瞬。でも、リアルな体験として、おいしかったものは忘れないですよね。そこそこおいしいではなく、本当においしいものは一生記憶に残って、一緒に食べた人と何年も話をするじゃないですか。そうやって、食べた人の記憶や思い出に残せるくらいの桃を作れたら最高だな」と沸々と湧き上がる想いを語ってくれた。

桃の時期まで、あと数ヶ月。まだ今年のパンフレットを送っていないというマルトウ農園だが、心待ちにしているファンからはすでに注文が入り始めている。甘い果汁がたっぷりと詰まった雨宮さんの桃は、新たなコミュニケーションツールとして多くの人々のもとへ今年も旅立っていくだろう。



マルトウ農園

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