歴史を大切にする勝沼醸造

歴史を大切にする勝沼醸造

1400年目に繋ぐ、サステナブルな甲州ワイン造り

山梨原産の固有品種、甲州の歴史を遡ればおよそ1300年前。シルクロードを経た東西交易に よってヨーロッパから甲州市・勝沼にのちに甲州ぶどうと呼ばれるぶどうが上陸したとされている(諸説あり)。以来甲州ぶどう発祥の地として知られる勝沼に、日本初のワイン醸造会社「大日本山梨葡萄酒会社」が設立されたのが明治十年。山梨で大々的にワイン造りが始まったのは今から約140年前になる。勝沼醸造はその時代とほぼ同時期に建てられた築130年の日本家屋がそのまま社屋になっている。社屋は有形文化財に指定されており、勝沼醸造のワイン造りの歴史を象徴する建物。そこから世界に通用するワイン造りを目指し、志高く研鑽を積んできた。「父は最初は洗練されたシャトーにしたかったようですけど、それを辞めたのはワイン造りの本場フランスの人たちが歴史と伝統を大切にしていることに気付いたから。フランスのシャトーと同じで日本家屋というのは日本固有の、歴史を大切にするかたちなんだと、建て替えることなく今に至ります」3代目・有賀雄二さんを父に持つ有賀淳さんは言います。この価値観こそが勝沼醸造のワイン造りを表していると言って良い。世界に誇れるワイン造りを目指してきたからこそ、フランスを真似するのではなく、その土地独自のオリジナリティとスタイルを貫くことこそ誇り。そのスタンスはぶどう栽培にも活かされている。

良いワインは良いぶどうから

勝沼醸造

川を挟んで観光客で賑わうワイナリーのテラスを横目に、裏手には勝沼醸造の自社畑が広がりる。勝沼醸造は特に甲州に特化したワイナリー。当初はフランス・ブルゴーニュ地方を原産とするシャルドネやボルドー地方で有力なカベルネ・ソーヴィニヨンなどの樹を植えていたそうだが、雨も多く、気温は全国で最高気温を記録するような土地では、世界と戦えるぶどうは作れないと、醸造する白ワイン用の品種を全て甲州種に切り替えた。つまり甲州種の栽培が山梨県・勝沼の風土にいちばん適しているということだ。「良いワインは良いぶどうから」をモットーに掲げる勝沼醸造は1300年という長い歳月を山梨の土地で生き抜いてきた甲州種に、「世界に通用するワイン」という夢を託した。 

勝沼醸造で仕込まれる甲州の10%が自社畑、90%は甲州市の契約農家さんの元で栽培されたものを使用している。ひとつの枝から収穫できる房の数が増えすぎないようコントロールすることで、房に行き渡る栄養価を多くし糖度を高める栽培を行っている。もともとワイン品種の伝統的栽培方法である垣根栽培も行なってきたが、勝沼エリアで一般的なぶどう栽培に用いられてきた棚栽培に戻している畑もある。「甲州市のぶどう農家さんたちが行ってきた棚栽培は作業の負担や効率を考えると合理的。その土地を知る先人たちの知恵が備わっているからこそ、高温多湿な勝沼でぶどう栽培するには最適な方法のひとつだと考えています」 淳さんの話から、人とぶどうという、勝沼醸造が大切にしてきた価値を持続可能(サステナブル)なものにする農業を考え、今なお改良を続けていることに土地とぶどう栽培への愛情がうかがえた。

“変な甲州ワイン”を生んだ醸造マジック

勝沼醸造

勝沼醸造はその醸造工程にもこだわっている。勝沼醸造ではぶどう本来の糖度を活かし、砂糖を極力加えない醸造を行い甲州種の味を高めている。それが冷凍果汁仕込みとよばれる勝沼醸造のワインの要となる醸造法。甲州種を搾った果汁を一度低温凍結させ、凍った水分だけを廃棄。残った果汁を凝縮し醸造することでその味わいを磨き上げた。今でこそ比較的大きなワイナリーが取り入れポピュラーとなった冷凍果汁仕込みだが、勝沼醸造では1993年から行っている。いいことずくめの冷凍果汁仕込みだが、コストがかかるという大きなデメリットがある。しかし、「価値はコストと別物。たとえ一樽でも最高のものを」と、信念を曲げずに醸造を続け、こうした努力がワイナリーの看板ブランドとして人気を博す「アルガブランカ」として実を結んだ。

1400年目にバトンをつなぐために

勝沼醸造

勝沼醸造は3代目・有賀雄二さん、醸造責任者に長男の有賀裕剛さん、営業責任者に勝沼醸造を案内してくれた次男の有賀淳さん、栽培責任者は三男の翔さんが担当している。一度は別の仕事、別の道を歩んでいた有賀家でしたが、再び雄二さんの元へ集い、志を共にすることとなった。裕剛さんはフランス・ブルゴーニュで醸造を学び、淳さんは大手酒販メーカーで営業を経験、翔さんは畑で実践を積んだ。それぞれの個性が作用しあうことで、「世界に通じる甲州ワイン」という勝沼醸造の大いなるロマンの歯車を動かしている。世界の舞台に上がるために、真似るのではなく、アイデンティティを活かす。それこそがワイン造りでたびたび用いられる“テロワールを表現する”ということだったのだ。テロワールとは端的に言えば風土の特徴を表す。甲州市・勝沼の気候、土、地形、ぶどう、そして人。それらが合わさることで勝沼醸造の甲州ワインの味ができあがる。同じ甲州市であっても厳密には地質も違えば標高に差もあり、気候も違う。それぞれの畑に合わせたワイン造りを行い甲州ワインの更なる可能性を追求している。

勝沼醸造

ワインでありながら、魚や和食に合う革新的な甲州ワインは各国首脳が集まる席で振る舞われるなどワインとしてのステータスを築き上げるほどに躍進を遂げた。勝沼醸造のワインもJALやANAのファーストクラスでサーブされるほど認知され、そのプライオリティは高まっている。まさに甲州の地が育んだ大河の一滴は海のように広がり世界中で愛されているのだ。甲州ワインの礎の一端を担う勝沼醸造は、ヨーロッパから日本へ甲州ぶどうが渡った1300年の悠久の時に思いを馳せて、1400年目へとその歴史を紡いでいく。

 

勝沼醸造株式会社

https://katerial.myshopify.com/collections/%E3%83%AF%E3%82%A4%E3%83%B3/%E5%8B%9D%E6%B2%BC%E9%86%B8%E9%80%A0%E6%A0%AA%E5%BC%8F%E4%BC%9A%E7%A4%BE

 

ブログに戻る
  • 【岩崎醸造株式会社】 120名の株主農家と歩むワイン造り

    詳しく見る 
  • 山梨市ーおしどり夫婦がつくるギュッと凝縮した『マイハート』

    詳しく見る 
  • 笛吹市ー井上さん家の極上シャインマスカット

    詳しく見る