【武の井酒造】創業150年、「花酵母」を活かした酒造りへの挑戦

【武の井酒造】創業150年、「花酵母」を活かした酒造りへの挑戦

創業150年以上、江戸時代から酒造りを行う老舗の酒蔵 <武の井酒造>。標高683m、八ヶ岳や南アルプスが周囲にそびえる北杜市高根町にあります。かつては手頃な「普通酒」をメインに造っていた酒蔵が、名水と大地の恵みを活かした高品質な酒造りへと進化し続ける <武の井酒造> の魅力とは・・・・・・・。

 

八ヶ岳の名水と大地の恵みを活かした酒造り

武の井酒造

雲ひとつない八ヶ岳ブルーが輝く空のもと、昔ながらの厳寒仕込みに徹する酒蔵は1月、まさに仕込みの真っ最中。使いこまれた道具が整然と並べられた一室で、日本酒「青煌(せいこう)」の酒米と麹米が蒸し上がったところに出合えました。創業期から親族経営で酒造りを行い、100石(10,000/年間)と国内でも少量生産ながら、八ヶ岳の名水と大地の恵みを活かした日本酒は、国内外の酒通から根強い人気を博しています。

 

武の井酒造 蔵は長年、手頃な普通酒を造ってきましたが、「味わい重視のお酒でなければ日本酒の未来はない」と感じた専務兼杜氏・清水紘一郎さんは、これらの商品に加えて付加価値を高めた新たな商品を打ち出し、ラインナップを強化しています。

 

 

新ブランド「青煌」 の誕生

日本酒の価値を追求した杜氏の挑戦

武の井酒造

清水さんは、幼い頃から酒蔵が身近な存在にあり、高校卒業後は自然な流れで東京農業大学の醸造学科に進学します。

「私が学んでいた学部は、全国の酒蔵の跡継ぎがたくさん学びにきていました。大学で日本酒を学ぶまでは、実家の酒蔵がどんなレベルの酒を造っているのかが分かりませんでしたし、実家の酒蔵が一番美味しいものだと勝手に思っていました。ある日、周りの同級生が持ち寄った全国津々浦々の日本酒の美味しさにショックを受けました。時代も大量生産される安価なお酒から、値段が多少高くてもこだわりのある製品を求められるようになってきたこともあり、味わいにプライドを持った日本酒を追求したいと学生時代に決意しました。」(清水さん)


武の井酒造

大学卒業後、清水さんは茨城県にある <来福酒造> 3年間修行した後、<武の井酒造> に戻ります。2007年、原材料にこだわり、手間暇かけて醸し出す「青煌」という日本酒を造ります。

「青煌」は、全国各地より取り寄せた酒造好適米を用い、発酵に必要な酵母は東京農業大学で花から分離された「つるばら酵母」をメインに使用しています。八ヶ岳の美しい名水を表現する「青」と、山梨の日本酒業界、また日本酒が世界に「煌(きら)めく」ようにという想いが込められています。

 

武の井酒造

「それまで、酒蔵として値段が高いものを造った経験はありませんでした。当時の社長からは、『原料の選定や販売価格の設定、営業から販売まで全て1人で出来る範囲ならやって良いよ』と製造の許可が下りました。こだわりのお酒を造る自信はそれなりにありましたが、自分が造ったお酒が世間でどれだけ売れるのかは全くの未知数であったため販売の不安は大きかったです。」(清水さん)

 

 

季節ごとの花酵母を使用した「四季シリーズ」

武の井酒造

 <武の井酒造> は、「青煌」に加え「武の井」という2大ブランドから構成されています。2015年、ブランド「武の井」は、かつては普通酒として手頃なイメージが付いていた日本酒を「地元にも美味しいお酒があるというのを知って欲しい」という想いからリブランディングされました。

 

武の井酒造

 「武の井」ブランドの中でも、全国の酒蔵でも類を見ない日本酒が「武の井 四季シリーズ」です。椿、桜、ヒマワリ、コスモスと季節の異なる花酵母で仕込み、その時期に合わせて期間限定で出荷する季節感のある日本酒です。

「『四季シリーズ』は、米の種類、精米方法、アルコール度数を同じにし、酵母の違いによる味わいを年間通して楽しむことができます。花酵母は、花から酵母を採取するのが難しく、実用化できる酵母は年に1種採れたら良い方です。花の酵母というと、香り一辺倒というイメージを持たれますが、優しく心地よい香りが漂う口当たりが滑らかな日本酒です。」(清水さん)

ラベルには花がなくても花を愛でられるよう、それぞれの酒に用いられた酵母の花が描かれています。

 

北杜市 武の井酒造 日本酒4本セット /  7,203 yen(税込)

 

 

武の井酒造

日本酒を造る酒造会社は、全国で2500社近く(平成初期)の酒蔵があったのに対し、現在は1,400社程に減少しています。(国税庁統計より)

「衰退産業である日本酒業界は、若い人が新たに酒蔵をつくろうと思っていてもできないのが現状です。歴史が長い酒蔵はたくさんありますが、積み重ねてきた酒造りの伝統を大切にしつつも、新たな創造を積み重ねていかないと先細りしていくだけです。今、日本酒業界は新陳代謝が求められています。これまでさまざまな日本酒を造ってきましたが、さらにブラッシュアップさせ、高品質な日本酒を山梨から世界へ届けるよう挑戦していきます。」(清水さん)

近く<武の井酒造>は、酒蔵の敷地内に試飲ができる建物が完成予定です。清水さんが、日本酒業界への熱い想いと新しい挑戦の中で生まれた「青煌」と「武の井」。老舗蔵元として挑み続ける、新たな酒造りに今後も目が離せません。

  

武の井酒造株式会社

山梨県北杜市高根町箕輪1450番地

http://takenoishuzo.jp/

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