カテリアルでは、さまざまなワインを取り扱っていますが、オレンジワインも人気の一つです。イベントで販売する機会もありますが、
「オレンジワインってオレンジ(柑橘)からできているんですか」
とお客様に聞かれる機会も少なからずあります。シリーズ1回目は、近年人気が高く日本でも生産するワイナリーが多くなってきている「オレンジワイン」について、株式会社岩崎醸造の代表・白石荘真さんに話を伺いました。
オレンジワインのルーツは、東ヨーロッパ・ジョージアにあった
オレンジワインとは、白ぶどうをベースに赤ワインと同じように皮や種も一緒に仕込む醸造方法で造られるワインです。 果皮や種を果汁に漬け込むことで、香りや色が抽出され、鮮やかなオレンジがかった色調になります。
「ワイン造り発祥の地と言われているジョージアでは、素焼きの甕(かめ)”アンフォラ” を地中に埋め込み、その中でぶどうを房ごと醸していました。今でもジョージアではこのような製法でワイン造りが行われています。岩崎醸造では ”醸し” と呼んでいますが、果汁だけを取り出す高度な機械がなかった時代に、甲州を皮ごと醸してワインを造っていました。」と白石さんは話します。
「オレンジワイン」という呼び名はイギリスのワイン商が2000年代に作った造語で、ジョージアでは「アンバーワイン」という名称を使用しています。
日本の固有種「甲州」のオレンジワインができるまで
「オレンジの色調を出すためには、果皮に含まれるフェノール類が熟してから収穫する必要があります。また甲州の果皮の渋みは、お茶に含まれているカテキンに似た成分です。果皮に含まれるじんわりとした渋みを抽出することで、ワインの味わいに厚みをもたらします。果皮や種を漬け込んだ状態で発酵させることを『マセラシオン(醸し)』と呼びますが、このマセラシオンをどのくらい行うかによって全く異なる味わいに仕上がります。」と白石さんは話します。
岩崎醸造では毎年、ぶどうの状態によってスキンコンタクトを行う期間を微調整しています。果皮の抽出期間が長いほど、味わいが渋くなるとイメージしますが、実際はスキンコンタクト序盤(3日間)は穏やかで、中盤(4~7日間)は渋みが強くなり、それ以降はまた穏やかになっていくそうです。低温発酵させてゆっくりと抽出されたもろみ液は、最適なタイミングで液体を果皮や種と切り離し、熟成へと進めていきます。
岩崎醸造〈シャトーホンジョー 甲州かもし アンティーク〉
〈シャトーホンジョー 甲州かもし アンティーク〉は、勝沼の先人たちが行なった伝統的な技法である「醸し」を2019年から現代風にアレンジして造ったオレンジワインです。
「日本のオレンジワインは、醸造方法が確立されていない中で、私たちはふくよかで厚みのある ”テクスチュア” の追求に励んでいます。渋味や苦味は余韻の長い味わいをもたらします。本ワインを野菜やお肉と合わせることで、甘味や旨味が引き伸ばされ、より深いコクのある味わいを楽しむ事ができます。」と白石さんは話します。
現行である2021年ヴィンテージは、りんごのコンポート、かりん、和柑橘、茶葉の香りが特徴です。醸し期間を4日間にすることで、緻密な酸を残しつつも心地よい渋みが余韻まで伸びていく仕上がりとなっています。
白ぶどうでありながら、赤ワインのようなコクも持ち合わせるオレンジワイン。揚げ物や中華といったコッテリとした料理のほか、サンマやアジのなめろうのような少し風味が強い食材など豊富なマリアージュが可能なのも魅力のひとつです。白か赤か迷ったら、ぜひオレンジワインを選んでみてはいかがでしょうか。