山梨県の名産として有名な桃やぶどうに加えて、山梨県はスモモの出荷数も日本一。中でも山梨県南アルプス市で誕生した高級スモモ「貴陽」は、桃と見違えるほどサイズが大きく、他のスモモと比べると段違いの甘さを誇ります。今回は、7月中旬~8月中旬に旬を迎える幻のスモモ「貴陽」のご紹介とともに、栽培が難しいと言われる「貴陽」を生産するカテリアル契約農家・塩谷修二さんに栽培秘話を伺いました。
山梨県南アルプス市生まれ。
伊勢神宮への奉納品として全国唯一の高級スモモ
「貴陽」が誕生した山梨県南アルプス市は、甲府盆地の西側に位置する果樹王国です。南アルプス山脈を背にし、肥沃(ひよく)な扇状地で水はけがよく、内陸性の寒暖差が大きいため果樹栽培に適しています。太陽、ソルダム、サマーエンジェルなど、山梨県のオリジナル品種が次々と誕生している中で、「貴陽」はスモモの生産量日本一を誇る南アルプス市で誕生した “最高峰のスモモ” として一目置かれています。
海外では日本スモモを特に「プラム」、西洋スモモは「プルーン」と呼ばれ、いわゆる日本で作られるスモモはヨーロッパ圏ではあまり知られていません※1。1996年に品種登録された高級スモモ「貴陽」は、スモモの品種「太陽」から自然交雑して育成され、質の高い味わいを追求するために20年の歳月を費やし試行錯誤の末に生み出された品種です。見た目と味わいのバランスが取れた最上級の商品は一般には出回らず、店頭にもほとんど並ばない幻のスモモです。また、三重県の伊勢神宮への奉納品である貴陽は、スモモとしては全国で唯一の奉納品になっています。
※1 明治時代、日本スモモの優良品種がアメリカに渡り品種改良された後、「プラム」という英語の呼び方で日本に戻ってきた。
「世界一重いスモモ」としてギネス認定。
甘さ・香り・果汁、どれをとっても別格のスモモ
貴陽は、ギネス世界記録に「世界一重いスモモ」として認定されるほどの大きさ(一般的なスモモの2~3倍)を誇り、種は小さく可食部分が多いのが特徴です。桃よりも酸っぱいことから「スモモ」と名付けられたという説もあるように、スモモ=酸っぱいというイメージを持たれる方が多いと思います。「スモモの王様」と呼ばれる貴陽は、平均糖度が17度と桃(※桃の平均糖度11度)よりも甘く、ジューシーで程よい酸味が特徴です。
果皮は完熟すると紫がかった紅色になり、熟すと同心円状のヒビのような輪紋が出やすいのも特徴の1つです。成熟の目安になるもので、輪紋が出ているものはよく熟していて甘味が強いといわれます。よく冷やして皮を剥き、パクリとひと口食べれば、きめ細やかな果肉から広がる奥深い甘みとほのかな酸味にこれまでのスモモのイメージが一新されることだと思います。
▼ 美味しい「貴陽」を選ぶポイント
選ぶ際は、下記を参考にしてみてください。
1. 全体が濃い紅色に染まっているもの
2. きれいな円形で張りがあり、しっかりと重みを感じるもの
3. 新鮮な証拠である表面の白い粉(ブルーム)がある
4. 成熟の目安である果皮の紅色の部分の「輪紋」がある
▼ 「貴陽」の皮を綺麗に剥くポイント
少しのコツでスルッと剥ける貴陽。下記を参考にしてみてください。
1. ぐるりと一周切れ目を入れる
2. パカーンと開いて種を取り出す
3. 食べやすい大きさにカット
4 . お好みで皮を剥いたら激うま貴陽の出来上がり
▼「貴陽」を使用したアレンジレシピをご紹介
暑い夏にピッタリ!! 貴陽のアレンジレシピをご紹介します。
★ひんやり!貴陽のシャーベット
・材料
貴陽・・・・・・・・お好きな個数
・作り方
皮と種を取ってカットしたものを冷凍するお手軽レシピ。そのまま食べても、炭酸ドリンクに氷の代わりに入れても食感の変化を味わえます。
★貴陽のヨーグルト
・材料
貴陽・・・・・・・・・1個分
無糖ヨーグルト・・・・・・50g
・作り方
貴陽は種を取り除いて一口大のざく切りにし、お皿に盛り付けて完成。お好みでハチミツをかけても深みが増しますよ。
熟練した栽培技術が必要な「貴陽」。
高品質な「貴陽」を栽培するカテリアル契約農家・塩谷さん
貴陽は実になっても早期落果が激しく、大実であることから追熟が早く安定生産が難しいといわれています。そのため山梨県の中でも限られたスモモ生産者しか栽培しておらず、貴陽の生産には熟練した技術と経験を必要とします。カテリアル契約農家である塩谷修二さんは、大きさ、香り、味わいのバランスが極めて高い貴陽を生産し、毎年高品質な商品を生産しています。
塩谷さんは、山梨県南アルプス市塩前地区というスモモの名産地に生まれ育ちました。塩谷家もまたスモモ農家として、太陽、ソルダム、サマーエンジェルなどを生産してましたが、塩谷さんのお父さんは周りの農家がほとんど作っていなかった新品種「貴陽」に挑戦しました。
「私はサラリーマンとして再就職を考えていた頃に父親が倒れ、農家を継ぐか迷っていましたが、成木になり始めていた貴陽を食べたとき、これまで感じたことがない驚きの甘さに『これならやっていける』と思い、脱サラして貴陽を量産しました。」と塩谷さんは話します。
お父さんが亡くなった40歳のときにスモモ農家を継ぎ、20年間貴陽を中心にスモモを生産しています。
高品質な貴陽を栽培する秘密を伺うと、「美味しくできる秘密なんて特にないよー」と謙遜しつつも、「収穫のタイミング」には特に気を付けていると話します。幼実から成熟まで硬い桃とは異なり、幼実の時期は柔らかく成熟に連れて硬くなり、その後熟していくスモモは、収穫適期である硬くなったタイミングを見極めるのが難しいと言われています。特に1日ズレるだけでも柔らかくなる追熟が早い貴陽にとって収穫のタイミングは極めて重要で、20年間「貴陽」と向き合い、最高の一瞬を見逃さない塩谷さんだからこそ見極められる職人技です。